
お悩み相談事例 子どもをネグレクトする妻と別れたいが親権は渡したくない
夫婦の関係がうまくいかなくなり関係修復が難しい場合、離婚という選択によって新しい人生を歩み始めることもできます。
しかし、そこに子どものネグレクトが関わっている場合、問題の論点は子どもの今後についてになるでしょう。
「自分が家を出たら、子どもはどうなるのか」
「妻に親権を渡して大丈夫なのか」
「父親でも親権を取ることはできるのか」
そんな不安から、身動きが取れなくなっている方もいらっしゃいます。
今回は、実際に寄せられるご相談をもとに、一部内容を変更した事例をご紹介しながら、ネグレクトする妻と離婚・親権の問題について、夫婦カウンセラーの視点からお話しします。
「妻と別れたいが子どもを置いていけない」ある夫からの相談
ご相談者は会社を経営している男性でした。
妻は夫の会社の「従業員」という形で子どもを保育園に預けていますが、実際には仕事をしていません。
保育園から子どもが帰ってきても、妻はイヤフォンをつけたまま。
子どもが一生懸命話しかけても、気づかない、あるいは聞こうとしない状態が続いていました。
食事は買ってきた総菜が中心。
家の中には埃がたまり、台所には洗われていない食器が山積みになり、汚れた衣類も放置されたまま。
夫が「もう少し子どものことを見てほしい」「せめて家を清潔にしてほしい」と注意すると、妻はこう強く反発します。
「そんなに気になるなら、あなたがやればいいでしょう。」
言っても変わらない妻との生活に疲れ果てた夫は、とうとう自宅に帰ることが苦痛になり、現在は会社で寝泊まりするようになっていました。
それでも、心から離れないのは子どものことです。
満足に世話をしてもらえないうえ、話しかけても反応してもらえない、気持ちを受け止めてもらえないという環境が長く続けば、子どもの心への影響も心配になります。
夫は「妻と別れたい」と考えています。
しかし妻は、「離婚しても親権は絶対に渡さない」と主張しています。
夫からすれば、今の妻に子どもを任せることなど到底できません。
夫婦カウンセラーの見解
こうしたケースで大切なのは、「夫婦のどちらが正しいか」という争いだけにしないことです。
何より優先しなければならないのは、「子どもにとって安全で安心できる生活は何か」という視点です。
子どもの食事・衛生・安全・情緒的な関わりが継続的に損なわれているのであれば、夫婦喧嘩の問題として済ませてはいけません。
子どもの心身の安全が現に脅かされている可能性がある場合には、児童相談所などの専門機関のサポートや弁護士などの専門家につなぐことも重要です。
ネグレクトする母親の心理と夫婦関係

ネグレクトという言葉を聞くと、「母親なのに、どうして子どもの世話ができないの?」と感じる方もいるでしょう。
しかし、夫婦カウンセラーとしては、目の前に現れている行動だけでその人を決めつけないことも大切にしています。
ネグレクトにつながる背景には、育児への強いストレス、孤立感、夫婦関係への不満、自分自身が育ってきた家庭環境など、さまざまな要因が絡み合っていることがあります。
原因を理解することと、問題行動を容認することは別
もちろん、「理由があるなら子どもを放置しても仕方がない」という話ではありません。
むしろ、「なぜ、この状態になってしまったのか」を整理しなければ、夫が何度「ちゃんと子どもの面倒を見ろ」「家事をしてくれ」と注意しても、妻は責められていると感じて反発し、夫はさらに失望する……という悪循環になりがちです。
そして夫婦だけで話し合おうとすると、過去の不満まで持ち出され、
「あなたが家にいないからでしょう」
「何度言っても何もしないじゃないか」
と、いつの間にか「子どものための話し合い」が「夫婦の勝ち負け」に変わってしまうことがあります。
これが、夫婦だけで解決しようとする難しさなのです。
離婚したら親権は母親が有利?
「離婚すると親権は母親が取るもの」と思っている方も少なくありません。
しかし、母親だから自動的に親権者になるわけではありません。
親権について考える際には、これまで誰がどのように子どもを養育してきたのか、離婚後にどのような生活・養育環境を整えられるのかなど、子どもの利益を中心にさまざまな事情が検討されます。
共同親権という選択肢も
日本では2026年4月1日から、離婚後の親権について父母の双方を親権者とする「共同親権」も選択できる制度が施行されています。
ただし、「共同親権なら解決する」と単純に考えられるものでもありません。
特にネグレクトが疑われるケースでは、子どもの安全や生活環境を最優先に考える必要があります。
「妻が親権を譲らないと言っているから、もう無理だ」と諦める必要はありませんが、反対に「妻がネグレクトしているから必ず自分が親権を取れる」と決めつけることもできません。
離婚や親権について具体的な法的判断が必要な場合は、早い段階で専門家や弁護士に相談することをおすすめします。
ネグレクトする妻に親権を渡したくない場合に考えること

まず重要なのは、感情的に妻を追い詰めることではありません。
子どもが実際にどのような生活をしているのか、誰が日常的な養育を担っているのか、今後父親がどのような養育環境を用意できるのかなど、「子どもの生活」という視点から現状を客観的に整理することが大切です。
今回の事例で特に気になるのは、夫が会社で寝泊まりしている点です。
夫には「もう妻とは一緒にいられない」という切実な事情があります。
しかし親権を望むのであれば、離婚後に「自分が子どもをどのように育てていくのか」という具体的な生活設計も重要になってきます。
仕事中は誰が子どもを見るのか。
保育園への送迎はどうするのか。
病気になったときはどうするのか。
「妻には任せられない」という主張だけではなく、「私はこのように子どもを守り、育てていけます」と示せる状態をつくっていくことが必要です。
夫婦カウンセリングで根本原因を整理し、納得できる選択へ
こうした問題を抱えているご夫婦に、夫婦カウンセリングでは「離婚したほうがいい」「やり直したほうがいい」と最初から答えを決めることはありません。
なぜ妻は育児から離れてしまったのか。
なぜ夫は家を出るところまで追い詰められたのか。
二人の関係はどこから崩れていったのか。
そして何より、これから子どもをどう守っていくのか。
絡まった糸を一本ずつほどくように整理していきます。
当事者同士では、「あのときあなたが」「そもそもお前が」と感情が先に立ち、話し合いが堂々巡りになりがちです。
カウンセリングでは、第三者であるカウンセラーが間に入ることで、夫と妻それぞれの感情と事実を分けて整理することができます。
相談者ご自身が納得できる最善の選択を
「離婚したいと思っているけれど、本当にそれでいいのだろうか」
「親権を渡したくない。でも自分一人で育てられるのだろうか」
このような迷いがあって当然です。
答えが出てから相談に来る必要はありません。
むしろ、答えが出ないときこそ、相談していただきたいと私は思っています。
離婚するにしても、夫婦関係を修復するにしても、大切なのは「あのとき、きちんと考えて決めた」と自分自身が納得できることです。
夫婦間のデリケートな問題は、一人で考えているほど不安が大きくなることがあります。
私はカウンセリングを通して、頭の中に絡み合っている不安や怒り、迷いを一つずつ整理しながら、最善な選択を一緒に探していきます。
まずは今抱えていることを、安心して言葉にしてみてください。一人で抱えていたときには見えなかった選択肢が、そこから見えてくることがあります。
※本記事は一般的な夫婦問題についての情報提供を目的としています。個別の親権・離婚手続など法律上の判断については、弁護士等の専門家へご相談ください。
