
お悩み相談事例 「パパ、ママ、もう離婚して」夫婦喧嘩が子どもに与える影響と心理的虐待
「子どものためにも、離婚だけは避けたい」
夫婦関係が悪くても、そう思って我慢しているお父さん、お母さんは少なくありません。
ところが、夫婦喧嘩が絶えず、子どもの前でも激しく言い争っているとしたらどうでしょう。
子どもにとって本当につらいのは、両親が離婚することではなく、毎日のように「パパとママがまた喧嘩するかもしれない」と怯えながら生活することかもしれません。
こうした状況が続けば、子どもの心に大きな影響を与えることが考えられます。
夫婦にとっては、喧嘩して仲直りすれば「終わったこと」になるかもしれませんが、子どもの心では終わっていないことがあります。
今回は、6歳の男の子が発したある一言をきっかけに、ご夫婦が自分たちの関係と向き合うことになった相談事例をご紹介します。
夫婦喧嘩が子どもに与える影響、そして「離婚か関係修復か」をどう考えればよいのか、夫婦カウンセラーとしてお話ししたいと思います。
「パパ、ママ、もう喧嘩しないで」6歳の息子が泣いた夜
ご相談者は結婚7年目の女性。ご主人との間には6歳と3歳、二人のお子さんがいます。
授かり婚だった二人は、結婚当初から喧嘩が多かったそうです。
喧嘩になると感情的になったご主人は、こう言います。
「お前のことなんか好きじゃなかった。結婚したくなかった」
傷ついた妻も言い返します。
「じゃあ離婚すればいいでしょ。私だって妊娠していなかったら結婚してない」
そのたびに、そばにいる子どもたちは泣いていました。
それでも夫婦は翌日には仲直りします。
二人にとっては、喧嘩しても何とか取り繕うことが日常になっていました。
それは、自分の気持ちを抑えることで、子どもたちを安心させるためでもありました。
ところが、ある晩のことです。
夫婦喧嘩の後で子どもを寝かしつけていると、6歳の長男が布団の中でぽつりと言いました。
「パパ、ママ、なんで喧嘩するの?もうやめて」
母親として、その言葉にはっとさせられたそうです。
「この子は生まれてから6年間、ずっと私たちの喧嘩を見てきたんですよね」
そして涙ながらに聞かれました。
「これ以上子どもを傷つけるくらいなら、離婚した方がいいのでしょうか?」
夫婦喧嘩が子どもに与える心理的影響

子どもにとって家庭は、本来「安心して帰れる場所」です。
ところが、大好きなパパとママが頻繁に怒鳴り合っていると、その安心できる場所が「いつ何が起きるか分からない場所」に変わってしまいます。
幼い子どもは夫婦喧嘩の原因を正しく理解できません。
そのため、
「僕が悪い子だから喧嘩するのかな」
「ママとパパが離れたらどうしよう」
「また喧嘩になるかもしれない」
と、自分を責めたり、親の顔色を必要以上にうかがったりすることがあります。
特に、子どもの前で配偶者への暴力などが行われる「面前DV」は、法律上でも心理的虐待に含まれます。
こうした環境が長く続けば、不安や恐怖が強くなったり、怒りっぽくなったり、反対に自分の感情を出さなくなったりするなど、子どもの心や行動に影響が現れることもあります。
気を付けてほしいのが「夫婦の問題だから」と軽く考えないことです。
子どものために離婚する?しない?私がまず伝えたいこと
このご相談を受けて、私はお母さんに「離婚したほうがいい」とはお伝えしませんでした。
反対に、「子どものために夫婦でいたほうがいい」とも言いません。
なぜなら、一番大切なのは婚姻関係を維持することではなく、子どもが安心して暮らせる家庭にできるかどうかだからです。
今回、私が特に気になったのは、
「お前なんか好きじゃなかった」
「妊娠していなかったら結婚していない」
という言葉です。
大人は夫婦喧嘩の勢いで言っただけかもしれません。
でも、子どもが聞けば「僕が生まれたせいで二人は仕方なく結婚したの?」と感じても不思議ではありません。
まずは、子どもの前で相手を否定したり、離婚を口にしたりする喧嘩を止めること。
そして、もう一つ大切なのが、なぜ二人はここまで傷つけ合わなければ気持ちを伝えられないのかを考えることです。
夫婦喧嘩を止めるだけでは、根本的な問題は残ります。
「離婚するかどうか」を急いで決める前に、二人の関係に修復できる余地が残っているのかを確かめる必要があります。
「もう喧嘩しない」と約束しても繰り返してしまう理由
夫婦喧嘩のあと、
「子どもの前ではもう喧嘩しないようにしよう」
と反省するご夫婦はたくさんいます。
それなのに、しばらくするとまた同じ喧嘩を繰り返してしまう。
これは「二人とも反省していない」からとは限りません。
表面的には些細な喧嘩でも、その奥には長年言えなかった不満が隠れていることがあるからです。
「家事を手伝ってくれない」という怒りの奥に、「私は大切にされていない」という妻の寂しさがある。
「いつも文句ばかり言われる」という夫の怒りの奥には、「家族のために頑張っているのに認めてもらえない」という思いがある。
本当に伝えたい気持ちを言葉にできないまま、お互いに一番傷つく言葉をぶつけてしまうのです。
そして当事者同士で話し合うと、
「そっちが先に言った」
「あなたが悪い」
と、また同じ喧嘩になってしまいます。
問題の中にいる二人だからこそ、冷静に自分たちの関係を見ることが難しいのです。
お子さんのためにも、1人で抱え込まないでください

夫婦カウンセリングでは、どちらが正しいか、どちらが悪いかを決めることから始めるわけではありません。
「なぜ夫の言葉にそこまで腹が立つのか」
「本当は妻に何を分かってほしいのか」
「二人はこれからどんな家族でいたいのか」
妻と夫、それぞれのお話を丁寧に伺いながら、表面的な喧嘩の奥にある本音を一つずつ整理していきます。
そして、夫婦関係を修復できる可能性があるのか。それとも距離を置いたり、離婚したりするほうが家族にとってよいのか。
私は答えを押しつけるのではなく、相談者ご自身が納得できる最善の選択を一緒に探していくことを大切にしています。
「子どものために離婚すべき?」
「夫婦関係を修復できる?」
「もう何をしても無理なのでは?」
答えが出ていない状態で相談していただいて構いません。
むしろ、夫婦だけでは同じ喧嘩を繰り返してしまうときこそ、第三者を頼ってほしいと思います。
子どもが求めているのは、必ずしも「パパとママが離婚しないこと」ではありません。
安心して眠り、安心して家に帰れること。
その環境をどうつくっていくのか。
離婚するのか、関係修復するのかも含めて、ご家族にとってより良い道を一緒に考えていきましょう。
